DHCPとは?仕組みとDHCPサーバーの役割 — ipconfig /release・/renew と、169.254になる原因

公開: 2026年11月 カテゴリ: ネットワーク

PCやスマホをWi-Fiにつなぐだけでインターネットが使えるのは、DHCPという仕組みが、IPアドレスなどの設定を自動で配っているからです。この記事では、DHCPサーバーとのやり取りと「リース」の仕組みを図で説明したあと、日本語版Windowsの ipconfig の表示をもとに、確認のしかたと、IPアドレスが 169.254 で始まってしまったときの調べ方を説明します。

DHCPとは:ネットワークの設定を自動で配る仕組み

DHCP(Dynamic Host Configuration Protocol)は、ネットワークにつないだ機器に、通信に必要な設定を自動で貸し出すプロトコルです。設定を配る側をDHCPサーバー、受け取る側(PCやスマホ)をDHCPクライアントと呼びます。

DHCPが無いと、機器を1台つなぐたびに、次の表の値を手で入力することになります。しかも、ほかの機器とIPアドレスが重ならないように、誰かが一覧で管理しなければなりません。

DHCPで配られる主なもの例何に使うか
IPアドレス192.168.1.10ネットワーク上の自分の住所(IPアドレスの仕組み)
サブネットマスク255.255.255.0どこまでが同じネットワークか(サブネットマスクの計算)
デフォルトゲートウェイ192.168.1.1ネットワークの外へ出るときの出口(ルーター)
DNSサーバー192.168.1.1名前からIPアドレスを調べる相手(DNSと名前解決)
リース期間24時間この設定を使ってよい期限

このほか、会社のネットワークでは社内のドメイン名や時刻サーバー(NTP)なども配ります。どれもDHCPの「オプション」として番号が決まっていて、たとえばサブネットマスクは1番、ゲートウェイ(ルーター)は3番、DNSサーバーは6番、リース期間は51番です。Wiresharkなどで通信を見ると、この番号で表示されます。

DHCPサーバーはどこにあるのか

家庭では、Wi-Fiルーター(ホームゲートウェイ)がDHCPサーバーを兼ねているのがふつうです。ルーターの設定画面に「DHCPサーバー機能」や「割り当てる範囲」の項目があるのはそのためです。会社では、Windows Serverの「DHCPサーバー」の役割や、ルーター・レイヤー3スイッチ・ファイアウォールの機能として動かしていることが多く、自分のPCがどこから設定をもらったかは、あとで説明する ipconfig /all の「DHCP サーバー」の行で分かります。

DHCPの仕組み:4回のやり取り(DORA)

IPアドレスを持っていないPCがネットワークにつながると、DHCPサーバーと次の4つのメッセージをやり取りします。頭文字をとってDORAと呼ばれます。

PC(クライアント) DHCPサーバー ① DISCOVER「アドレスをください」 全員宛て(ブロードキャスト) ② OFFER「192.168.1.10 はどう?」 ゲートウェイやDNSサーバー、期限も添える ③ REQUEST「192.168.1.10 をください」 これも全員宛て(選ばなかったサーバーにも伝わる) ④ ACK「どうぞ。期限は24時間」 これで貸し出しが確定する
図1: DHCPでIPアドレスをもらうまでの4回のやり取り(DORA)
  1. DISCOVER(発見):PCは、DHCPサーバーがどこにいるかも、自分のIPアドレスも知りません。そこで送信元を 0.0.0.0、宛先をLAN全体(255.255.255.255)にして「DHCPサーバーはいませんか」と叫びます。
  2. OFFER(提案):DHCPサーバーが、空いているアドレスを1つ選び、ゲートウェイやDNSサーバー、リース期間と一緒に「これを使いませんか」と提案します。
  3. REQUEST(要求):PCが「そのアドレスをください」と返事をします。DHCPサーバーが2台以上あって複数の提案が届いた場合も、この全員宛ての返事で「どのサーバーの提案を選んだか」が伝わり、選ばれなかったサーバーは用意したアドレスを引っ込めます。
  4. ACK(承認):サーバーが「どうぞ」と確定させます。断るときは ACK の代わりに NAK を返し、PCは DISCOVER からやり直します。

通信にはUDPの67番(サーバー側)と68番(クライアント側)を使います(ポート番号の一覧)。アドレスが無い状態ではTCPの接続を作れないので、UDPで送るしかありません。

WindowsはACKを受け取ったあと、すぐには使い始めず、そのアドレスをほかの機器が使っていないかをARPで確かめます(arpコマンドと arp -a の見方)。もし使われていれば、サーバーに「このアドレスは使えなかった」と伝えて別のアドレスをもらい直し、イベントログに「…IP アドレス 192.168.1.10 が、ネットワーク上で既に使用中であることが検出されました。自動的に別のアドレスの取得を試みます。」(イベントID 1005)と記録します。

リース:アドレスは「期限つきの貸し出し」

DHCPのアドレスはもらいっぱなしではなく、リース期間という期限つきで貸し出されます。期限があるので、ネットワークから去った機器のアドレスは、そのうちサーバーに戻り、別の機器に貸し出せるようになります。

使い続けたい機器は、期限が来る前に延長を頼みます。延長を頼むタイミングは決まっていて、ふつうは次のとおりです(サーバー側の設定で変えることもできます)。

リース期間24時間の例(延長に失敗し続けた場合) ふつうに使う 延長を頼む 0 50% 87.5% 100% 50%:借りたサーバーに直接頼む(12時間後) 87.5%:どのサーバーでもよいので頼む 100%:アドレスを手放す
図2: 延長に成功すれば、期限はその時点から延びる。ふつうは50%の時点で済む

PCを再起動したときも、Windowsは最初からDORAをするのではなく、まず前回のアドレスを指定して「これをまた使いたい」と頼みます。DHCPなのに毎回同じアドレスになりやすいのはこのためです。

リース期間の長さはDHCPサーバーの設定しだいで、Windows ServerのDHCPサーバーは既定で8日です。家庭用ルーターは機種によって違い、設定画面で変えられるものが多くあります。来客用Wi-Fiのように、たくさんの機器が入れ替わるネットワークで期間が長すぎると、もう来ない機器にアドレスを貸したままになり、後で説明する「アドレス切れ」の原因になります。

Windowsで確認する:ipconfig /all の見方

コマンドプロンプトで ipconfig /all を実行すると、DHCPでもらった内容が確認できます。日本語版Windowsでは次のように表示されます(アドレスと日時は説明用の値に置き換えています)。

イーサネット アダプター イーサネット:

   接続固有の DNS サフィックス . . . . .:
   説明. . . . . . . . . . . . . . . . .: Realtek PCIe GbE Family Controller
   物理アドレス. . . . . . . . . . . . .: 00-1A-2B-3C-4D-5E
   DHCP 有効 . . . . . . . . . . . . . .: はい
   自動構成有効. . . . . . . . . . . . .: はい
   IPv4 アドレス . . . . . . . . . . . .: 192.168.1.10(優先)
   サブネット マスク . . . . . . . . . .: 255.255.255.0
   リース取得. . . . . . . . . . . . . .: 2026年11月5日 9:12:40
   リースの有効期限. . . . . . . . . . .: 2026年11月6日 9:12:40
   デフォルト ゲートウェイ . . . . . . .: 192.168.1.1
   DHCP サーバー . . . . . . . . . . . .: 192.168.1.1
   DNS サーバー. . . . . . . . . . . . .: 192.168.1.1
行意味
DHCP 有効「はい」ならDHCPで設定をもらっている。「いいえ」なら固定IP(手で入力した設定)で、リースやDHCPサーバーの行は表示されない
自動構成有効DHCPサーバーから返事が無いとき、169.254で始まるアドレスを自分で付けるかどうか(後述)
リース取得最後にリースを取得・延長した日時。延長に成功するたびに新しくなる
リースの有効期限この日時までに延長できないとアドレスを手放す。「リース取得」との差がリース期間
DHCP サーバー設定をくれたDHCPサーバーのアドレス。家庭ならルーター。思っていないアドレスなら要注意

PowerShellなら、Get-NetIPAddress -AddressFamily IPv4 の PrefixOrigin 欄で区別できます。DHCPでもらったアドレスは Dhcp、手で設定したアドレスは Manual と表示され、ValidLifetime 欄にはリースの残り時間が出ます。筆者の固定IPのPCで実行すると、ValidLifetime は 10675199.02:48:05.4775807(約2万9千年=期限なし)と表示されました。アダプターごとにDHCPかどうかだけ見たいときは、Get-NetIPInterface -AddressFamily IPv4 の Dhcp 欄(Enabled か Disabled)が手軽です。

ipconfig /release と ipconfig /renew

コマンドやること
ipconfig /releaseDHCPでもらったIPv4アドレスをサーバーに返す。その時点で通信できなくなる
ipconfig /renewDHCPサーバーにアドレスを頼み直す。リースが残っていれば同じアドレスのまま延長されることが多い
ipconfig /renew "Wi-Fi"アダプターを1つだけ指定する。名前は ipconfig の「〜 アダプター ○○:」の○○の部分。* と ? のワイルドカードも使える

アダプターを指定しないと、DHCPを使っているすべてのアダプターが対象になります。使う場面は、たとえば次のようなときです。

失敗したときの表示で、何が起きているかが分かります。

表示意味
インターフェイス ○○ の更新中にエラーが発生しました: DHCP サーバーに接続できません。要求がタイムアウトしました。DHCPサーバーから返事が無い。ケーブル・Wi-Fi・ルーター側を確認する(169.254の項と同じ調べ方)
この処理に対して許容される状態のアダプターが存在しないため、処理に失敗しました。DHCPを使っているアダプターが無い。つまり固定IPになっている
アダプター ○○ は DHCP に対して有効になっていません。指定したアダプターが固定IP
メディアが接続されていないと、○○ に対する処理はいずれも実行できません。ケーブルが抜けている、Wi-Fiにつながっていない

リモートデスクトップで操作しているPCでは /release を実行しないでください。アドレスを返した瞬間に接続が切れ、/renew を打てなくなります。遠隔で取り直すなら、PCの再起動か、現地で作業できる人に頼むのが確実です。

IPアドレスが 169.254 で始まるのは、DHCPサーバーから返事が無いとき

ipconfig で「IPv4 アドレス」の代わりに「自動構成 IPv4 アドレス」という行があり、169.254.○.○ になっていたら、DHCPサーバーから返事をもらえなかったしるしです。Windowsは、DISCOVERを送っても返事が無いと、169.254.0.0/16 の中から自分でアドレスを選んで付けます(APIPA:自動プライベートIPアドレス)。

このアドレスで話せるのは、同じLANで同じく169.254のアドレスを持つ機器だけです。ゲートウェイもDNSサーバーも無いので、インターネットにも社内のサーバーにもつながりません。その間もWindowsは裏でDHCPサーバーを探し続けていて(Microsoftの説明では5分ごと)、返事が来れば自動で正しいアドレスに切り替わります。

原因は「PCとDHCPサーバーの間のどこかで、DHCPのやり取りが届いていない」ことです。近いところから順に確かめます。

確かめることよくある原因と対処
1. 同じルーターにつないだ別の機器は使えているかほかの機器も全滅なら、ルーター側の問題。ルーターを再起動する。ルーターの設定でDHCPサーバー機能が「無効」になっていないかも確認する
2. このPCだけかLANケーブルの差し直し・交換、Wi-Fiのつなぎ直し、別のLANポートを試す。Wi-Fiは、パスワードを間違えたままでもアダプターが「接続中」に見えることがある
3. 機器が多いネットワークか貸し出せるアドレスを使い切った(アドレス切れ)。ルーターの設定画面で、割り当てる範囲(台数)とリース期間を見直す
4. 社内で、特定の場所や席だけかスイッチのポートのVLAN設定違い、別のネットワークのLANポートにつないでいる、DHCPリレーの設定漏れ(後述)。ネットワークの担当者に、つないでいるポートを伝えて確認してもらう
5. セキュリティソフトやVPNを入れた直後か通信を止めていないか、一時的に無効にして試す

原因を取り除いたら、ipconfig /renew で取り直します。なお、ルーターを通さずにPC同士をLANケーブルで直接つないだときに両方が169.254になるのは正常な動作で、そのままお互いに通信できます。

ネットワークの設定画面(ncpa.cpl)でアダプターのIPv4のプロパティを開くと、「代替の構成」タブで、返事が無いときに169.254を付ける(「自動プライベート IP アドレス」)か、決めておいたアドレスを使う(「ユーザー構成」)かを選べます。ふつうは変える必要はありません。

IPアドレスを固定したいとき:固定IPとDHCPの予約

プリンターやNAS、サーバーのように、ほかの機器から決まったアドレスで呼ばれる機器は、アドレスが変わると困ります。アドレスを決まった値にする方法は2つあります。

固定IP(機器側で手入力)DHCPの予約(サーバー側で指定)
設定する場所機器そのもの。Windows 11なら「設定」→「ネットワークとインターネット」→ 接続の「IP 割り当て」で、「自動 (DHCP)」を手動に変えるDHCPサーバー(ルーターの設定画面)で、機器のMACアドレスと渡すアドレスを登録する
DHCPサーバーが止まっても使える使えない(新しくアドレスをもらえない)
ゲートウェイやDNSを変えるとき機器を1台ずつ設定し直すサーバー側を変えれば、延長や再起動のときに反映される
向いている機器ルーター、DHCPサーバー自身、DNSサーバーなど、ネットワークの土台になる機器プリンター、NAS、家庭内のPCやゲーム機など

固定IPにするときの注意点は、DHCPサーバーが貸し出す範囲の中のアドレスを選ばないことです。たとえばルーターが 192.168.1.100〜199 を貸し出す設定なのに、プリンターを 192.168.1.120 に固定すると、いつか同じアドレスが別の機器に貸し出されて、IPアドレスの競合が起きます。貸し出す範囲はルーターの設定画面で確認できるので、その外のアドレスを選びます。

予約で注意したいのは、Wi-FiのMACアドレスが変わる機能です。Windowsの「ランダムなハードウェア アドレス」やiPhoneの「プライベートWi-Fiアドレス」が働いていると、DHCPサーバーからは別の機器に見えるため、予約したアドレスが渡されません。予約したい機器では、そのWi-Fiだけ機能をオフにするか、固定のアドレスを使う設定にします。

社内ネットワークで知っておきたいこと

DHCPのやり取りはルーターを越えない
DISCOVERは全員宛て(ブロードキャスト)なので、ルーターやレイヤー3スイッチで区切られた先には届きません。フロアやVLANごとにDHCPサーバーを置かず、1台のサーバーで全体に配る場合は、各ネットワークのルーターにDHCPリレー(Cisco機器なら ip helper-address)を設定し、全員宛ての問い合わせをDHCPサーバーへ転送させます。新しいVLANを作った直後に、そこだけ169.254になるときは、この設定漏れを疑います。

知らないDHCPサーバーが紛れ込むことがある
PCは最初に届いた提案を選ぶことが多いため、誰かが家庭用のWi-Fiルーターを社内のLANにつなぐと、そのルーターが勝手にアドレスを配り始め、一部のPCだけ社内のサーバーにつながらなくなることがあります。ipconfig /all の「DHCP サーバー」が見覚えのないアドレスになっていないか、「IPv4 アドレス」が社内の範囲(たとえば 10.○.○.○)ではなく 192.168.○.○ になっていないかが手がかりです。スイッチの「DHCPスヌーピング」機能を使うと、決められたポート以外から来るDHCPの返事を捨てて防げます。

DHCPサーバーが止まっても、すぐには困らない
すでにアドレスを持っているPCは、リースの期限までそのまま使えます。困るのは、新しくつないだPCと、期限が来たPCです。Windows ServerのDHCPサーバーには、2台で同じ範囲を受け持つ「フェールオーバー」の機能があります。

DHCPの記録をイベントビューアーで見る

WindowsのDHCPクライアントの記録は、イベントビューアーの「アプリケーションとサービス ログ」→「Microsoft」→「Windows」→「Dhcp-Client」にあります(開き方はイベントビューアーの開き方と見方)。トラブルのときに見るのは「Admin」のログで、主に次のイベントが出ます。

ID内容(要約)読み方
1001DHCPサーバーからアドレスを割り当てられなかった。引き続き取得を試みる169.254になったときに出る。DHCPサーバーまで届いていない
1003割り当てられたアドレスを延長できなかった。引き続き取得を試みる延長の時点でサーバーから返事が無かった。期限内なら、まだ通信はできる
1000IPアドレスのリースを失った延長できないまま期限が来た
1002DHCPサーバーがリースを拒否した(DHCPNACK)前回のアドレスがこのネットワークでは使えない。別のネットワークにつなぎ替えた直後なら正常
1005アドレスがネットワーク上で既に使用中だった。別のアドレスの取得を試みる固定IPの機器が、DHCPの貸し出す範囲のアドレスを使っている可能性
1007IPアドレスを自動的に構成した169.254のアドレスを自分で付けた

DISCOVERやACKを受け取ったことなど、ふだんの細かい動きは「Operational」のログに記録されますが、このログは既定で無効です(筆者のPCでも無効でした)。調べたいときは、「Operational」を右クリックして「ログの有効化」を選んでから、問題を再現させます。

よくある質問

Q. DHCPのポート番号は?
A. UDPの67番(サーバー側)と68番(クライアント側)です。クライアントはまだIPアドレスを持っていないので、TCPのように接続を作ってから話すことができず、UDPで送ります。

Q. DHCPなのに、毎回同じIPアドレスになるのはなぜ?
A. リースの期限内は同じアドレスを延長して使い続けるうえ、再起動したときもPCは前回のアドレスを指定して「これをまた使いたい」と頼むからです。DHCPサーバーも、同じ機器(MACアドレス)にはなるべく同じアドレスを渡します。ただし保証はないので、必ず同じにしたい機器はDHCPの予約か固定IPにします。

Q. ipconfig /renew で「この処理に対して許容される状態のアダプターが存在しないため、処理に失敗しました。」と出る。
A. DHCPで設定されているアダプターが1つも無いときの表示です。ipconfig /all で「DHCP 有効」が「いいえ」なら、そのアダプターは固定IPなので、/renew の対象になりません。

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